日本初のLCC(Low Cost Carrier)として関西空港を拠点に運航を開始し、2027年で15年目を迎えるPeach Aviation株式会社(以下、Peach)。同社の累計搭乗者数は8,000万人を突破し、ヒト・モノ・コトの交流を深めるアジアのかけ橋としてなくてはならない存在となっています。
同社は、コロナ禍の危機を乗り越え、手軽な運賃はそのままに、「価格以上の価値」を提供するエアラインへとさらなる進化を遂げようとしています。
「愛あるフライトを、すべての人に。」という同社のビジョンやさらなる挑戦の基盤を支えるバックオフィスでは、航空機やパーツ類等に関する膨大な契約や請求、支払いを日々処理しています。特に、航空業界にとって、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首に迫る「新リース会計基準」への対応は、貸借対照表(BS)への影響も大きく、緊急性の高い重要なテーマです。
同社 法務部 法務課 法務課長 松見 駿一 様と同社 経理・財務室 経理・財務部 経理課 土橋 由衣 様に、航空運送事業を支える契約管理体制、新リース会計基準への対応、そしてAI時代におけるバックオフィスの役割の変化と展望に至るまで、詳細にお話を伺いました(取材:2026年7月)。
本記事のポイント
Over view
- 同社の法務部 法務課 / 経理・財務室 経理・財務部 経理課の概要
- 人数:法務部 5名 / 経理課 4名
- 既存契約:約6,000件
- Hubble mini導入前の課題
- 手入力により生じていた法務・事業部門双方にかかる契約書管理の事務負担
- 入力ミスや漏れ、入力ルールの不統一等による運用限界に伴う過去契約書の検索性の悪さ
- 事業部門からの問い合わせ対応や期限管理にかかる負荷
- 経理の日常業務に加え、2027年4月以降強制適用が開始される「新リース会計基準」への対応に向け、限られたリソースで約6,000件におよぶ過去契約を効率的に精査する必要性
- Hubble miniの利用範囲
- 法務部、総務部、経理・財務部、空港センター及びその他契約書の管理・閲覧に関わる部署
- Hubble miniに格納している文書の種類
- 業務委託契約書、空港・地上運用関連契約書、航空機・パーツ関連契約書をはじめとする全社契約書
- Hubble mini 導入後の効果
- 契約書データをアップロードするだけで、正確かつ効率的な契約書管理体制が実現し、法務・事業部門の双方にかかる事務負担を削減
- 約6,000件の契約群から新リース該当候補を一括抽出し、手作業・目視による膨大な時間と人件費を削減
- AIが提示する「判定理由」が、経理チームによる目視・最終確認時の判断材料となり判断の正確性を担保
- 反社条項に関する確認もカスタム項目AI自動入力機能により自動抽出
法務にも事業部門にも負担がない契約書管理体制を求めて
本日は関西国際空港に隣接するオフィスにて取材をさせていただいております。早速ですが、松見様が課長を務めていらっしゃる、法務部の概要について教えてください。
松見
法務部法務課は、課長である私の他に、担当役員が1名、部長が1名、メンバーが2名の全5名体制で、弁護士資格保有者が2名所属している点が特徴です。
作成・審査から保管・管理まで契約に関する一連の業務、新規事業をはじめとする法務相談、内部通報対応、社内研修等のコンプライアンス推進から各種トラブルや訴訟対応まで幅広く主管し、当社のビジョンである「愛あるフライトを、すべての人に。」を法務面から支えていくべく日々業務に取り組んでおります。

Peach Aviation 株式会社 法務部 法務課 法務課長 松見 駿一 様
続いて、土橋様がご所属されている、経理・財務室 経理・財務部 経理課についても教えてください。
土橋
経理・財務部は経理処理の正確性、スピード、そして生産性を追求することをミッションに、経理課、収入管理課、財務課の3つの課で構成されています。
私が所属する経理課は課長以下3名のメンバーで構成されています。経理課は、財務諸表や税務申告書の作成、各部門から提出される請求書に対する支払処理や社内の経費精算等の業務も担当しています。

Hubble miniを導入される前は、契約書をどのように管理されていたのでしょうか?
松見
元々は各部門から契約書を法務部に提出してもらい、紙の契約書については法務部でPDF化をして契約書データをスプレッドシートに手入力して集約・管理をしていました。
しかし、法務部での事務業務の負荷が高かったため、各部門に紙の契約書をPDF化してもらい、締結版の契約書データをフォーム経由で提出してもらうことでスプレッドシートに自動で情報を集約する運用へと変更しました。
運用変更により法務部としての事務業務の負荷は下がる中でも、課題を感じていたのでしょうか?
松見
はい。運用変更により、法務部の事務作業は減ったものの、事業部門側では独自の管理方法をとっている部署もあったため、事業部門側でのフォームへの入力の事務作業が負担になってしまったことに課題を感じていました。
また、事業部門の担当者によって入力の規則やファイル名の付け方が統一されていないため、後から検索しても必要な契約書を探し出せなくなることもありました。法務部では、過去の契約書の所在や内容についての事業部門からの問い合わせにも対応していましたので、決して効率的とは言えない状況でした。

人が手入力する管理方法だと、入力の工数がかかってしまうだけでなく、どうしても入力ミスや漏れが一定は生じてしまいますよね。そうした中で契約管理システムの検討を始められたかと思いますが、最終的に「Hubble mini」を選ばれた決め手は何だったのでしょうか?
松見
「PDFをアップロードするだけでAIが自動で項目を読み取り、契約書管理ができる」というシンプルさが決め手でした。
現在、法務部では、Hubble miniはどのようにお使いいただいているのでしょうか?
松見
一番多い利用の方法は、新しく契約を締結する際に、同一の契約相手の過去の契約書を参照する際に検索しています。Hubble miniのAIは、契約書の内容を要約してくれるので、契約書をすべて読まなくてもどのような契約だったのかがすぐにわかり非常に便利です。
また、年に1回、一定の基準に基づき契約書に反社条項が入っていることを確認しているのですが、反社条項の有無の精査だけでなく、確認対象となる契約書の該当性の判断をカスタム項目AI自動入力機能で台帳に自動抽出しています。

法務部以外の部署ではどのようにお使いいただいていますか?
松見
一番使っていただいているのは契約書の期限管理です。
特に空港センターでは各種業務委託契約を取り扱っているのですが、Hubble mini導入後はメールで更新・解約期限通知を受領するだけで更新・解約の判断ができるようになり非常に便利だとの声が上がっています。
限られたリソースの中で、日常業務に加えて「新リース会計基準」への対応が急務に
法務部でHubble miniの運用が定着し始めたころ、経理・財務部では、2027年4月以降強制適用が始まる「新リース会計基準」への対応がスタートしました。
ここから、貴社における新リース会計基準への対応体制について伺っていきます。まず、現在貴社ではどのように新リース会計基準への対応を進めているのでしょうか?
土橋
新リース会計基準への対応は、全社で対応すべき業務であるため、課を超えて経理・財務部のプロジェクトチームとして対応に当たっています。チームは私の他2名の合計3名で構成されており、通常業務に加えプロジェクト業務として対応しています。

航空業界にとって、新リース会計基準への対応は非常に大きな影響があると伺いました。具体的にどのような難しさがあったのでしょうか?
土橋
航空会社の場合、航空機本体はもちろん、機体パーツ類など非常に細かく膨大な契約が存在します。
航空機は従来はオペレーティング・リースとして処理してきましたが、新基準ではファイナンス・リースとして貸借対照表(BS)に計上しなければならなくなるため、BSへの影響が極めて大きくなります。
2024年の9月頃に遡及適用対応のために過去の契約書の洗い出しを始めましたが、既存のリース判定ツールは契約書を1件ずつアップロードする必要があったので非常に時間がかかることが課題でした。
契約書を1件1件確認していくとなると非常に大変ですね。新リース会計基準への対応は遡及適用もあるため、過去の全ての契約書の洗い出しが必要かと思います。全体ではどれくらいの契約書数が確認対象だったのでしょうか?
土橋
精査対象の契約書は、約6,000件弱ありました。
同時期に会計システムの刷新プロジェクトも並行して動いていて、限られた人手の中でこの約6,000件を精査していかなければならなかったこともあり、より効率的な対応手段を検討せざるを得ない状態でした。

そうした中で、どのようにして対応を進められたのでしょうか?
土橋
当初は既存のシステムでの対応と松見さんに作っていただいた汎用AIによる対応の2つの選択肢で検証していたのですが、いずれも契約書の洗い出しに時間がかかっておりました。
そのような状況の中で、法務部で導入したHubble miniに「新リース会計基準判定支援機能」のオプションがあると伺い、複数の選択肢の中から、最も効率の良い対応手段を検討し始めました。
新リース会計基準への対応のために予算は組まれていたのでしょうか?
土橋
予算は予め確保していなかったため、特別予算を組んでもらえるよう、室長、上長2名に対して、私から3つのツールを比較したプレゼンを行いました。
プレゼンではどのような説得をされたのでしょうか?
土橋
Hubble miniの新リース会計基準への対応は、ASBJの基準に則っており、「手作業で判定した場合にかかる人件費や時間や精度」と、「Hubble miniにより一括で一次判定した上で、人がダブルチェックする正確性や効率性」を比較すると、Hubble miniのかかる追加費用は決して高くないと説明しました。
その結果、全員一致で「ぜひ使おう」とその場でスムーズな意思決定がなされました。
AIと人間の役割分担により、判断のスピードと正確性を両立
特別予算による導入が決まり、さっそくスタートしたHubble miniの新リース会計判定支援機能オプションでの精査作業。その結果、期待以上の効率化が実現しました。
実際にHubble miniの新リース会計判定支援機能オプションを使われてみて、作業の進み具合や効率面はいかがでしたか?
土橋
最初に松見さんから簡単にHubble miniの使い方を教えていただいたのですが、シンプルな画面で分かりやすく、迷うことなく使い始めることができました。
Hubble miniの利用をスタートしてからすぐに、約6,000件弱あった既存契約の中から新リースに該当しうる契約書を一括で自動抽出できたので、すごく助かりました。
これをもし手作業で1件ずつ確認していたら…1件あたり数分だとしても、既存契約は約6,000件ありましたので、膨大な時間と人件費がかかっていたはずです。

約6,000件を手作業で精査する途方もない工数がカットできたのは大きいですね。判定の精度や使い勝手はいかがでしょうか?
土橋
Hubble miniから抽出されたCSVデータには判定結果だけでなく理由も書かれているんです。この理由の記述がとても丁寧で、私たちが判定結果を最終確認するときにも非常に参考になっています。
AIの判定理由が分かることで、最終的な人による目視チェックの作業もスムーズに進められています。
AIが一次判定するだけでなく「理由」まで提示してくれることで、経理チームが最終判断を行う際に正確性と効率性が両立できるのですね。元々Hubble miniを活用されていた法務部におけるHubble mini導入後の効果についても教えてください。
松見
新たに契約を締結する際、Hubble miniで同一取引先との過去契約を検索して要約を参照することで、1件あたりの審査速度が早くなっている実感があります。
Hubble mini導入後に入社したメンバーも、類似契約や過去のナレッジを調べるために非常に活用していますね。
Hubble miniを導入した部署からは「過去の契約書を見せてほしい」といった法務への問い合わせがなくなっています。

会社全体や他の部門での効果もありましたか?
松見
法務部も事業部門も、契約書の内容を抽出して手入力するという事務作業がなくなり、AIにより効率的かつ正確な契約書管理が実現できたところは、会社全体にとってのメリットです。
今までは、例えば、事業部門の担当者に、反社条項の有無をフォームに入力してもらっていましたが、ミスなくAIで自動抽出できるようになりました。
「Human in the Loop」の中で定型業務をAIに委ね、人間は責任ある意思決定に注力
部門を超えた業務基盤となったHubble mini。最後にお二人に、AI時代におけるバックオフィスの役割の変化と展望について伺いました。
AI技術が急速に進化する中で、「法務や経理の仕事はAIに代替されるのではないか」という議論もよくなされています。お二人はこれからの時代における、人間(バックオフィス)の役割をどのように考えていらっしゃいますか。
土橋
確かに「経理の仕事はAIでなくなっていく」といった話も耳にします。
でも逆に、AIがもっと進化して入力作業などをこなしてくれた上で、私たち人間は「自分の目で最終確認する」というところに注力できたら、もっと生産性が上がってより正しい業務遂行ができるのではないかと思っています。

おっしゃるとおり、「Human in the Loop」の中で人間の役割は、一つひとつチェックしていくことではなく、AIが自動処理を行ったアウトプットにより人間が関与すべき対象範囲を狭めて、専門性をもって深く、正確に判断していくことに移行していくように思います。松見様はいかがでしょうか?
松見
法務も経理と同じで「AIに取って代わられる職業」なんて言われたりします。
ただ、期限管理のようにAIにやらせた方が絶対良い定型作業はどんどん任せてしまって、空いた時間で人間が「頭を使う仕事」をやっていくべきだと思っています。
松見様の考える、人間がやるべき「頭を使う仕事」とは具体的にどのようなものでしょうか?
松見
契約審査で言えば、「リスクをどこまで取るか」という判断ですね。AIに一次審査をさせると、基本的には主要なリスクを高い精度で、幅広くカバーして指摘してくれます。でもその上で、専門的な知識や経験をもとに、「このリスクは対処すべきか」「このリスクはあるけれど、事業を前進させるために譲歩するか」という責任を伴う意思決定はAIにはできません。
ビジネスを推進するためにどこで着地させるかという判断こそが、人間が介在する意義であり、知的な価値だと思っています。その観点で、バックオフィスから会社の事業をどんどん後押ししていける存在を目指していきたいですね。
AIが得意な作業は委ね、人間はビジネスを前進させるための高度な意思決定に集中する。Peachのバックオフィスが挑む改革は、これからのAI時代における「バックオフィスの攻めの姿」を象徴していると感じました。松見様、土橋様、本日は貴重なお話をありがとうございました!

会社概要(2026年9月現在)
Company Profile
| 会社名 | Peach Aviation株式会社(Peach Aviation Limited) |
| 所在地 | 大阪府泉佐野市泉州空港北1番地 |
| 設立 | 2011年2月10日 |
| 代表者 | 代表取締役CEO 大橋 一成 |
| 事業内容 | 航空運送事業(国内線・国際線) |
| URL | https://www.flypeach.com/ |
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